【妊娠高血圧症候群の解説】生まれる子は小さい⁉‐成長発達への影響

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中・出産時・産後の高血圧に至ることを合わせた呼び方です。

「妊娠20週以降、分娩12週までの期間に高血圧、または高血圧に蛋白尿を伴い、かつこれらの症状が単なる偶発合併症によるものではない」ものと定義されています。

全妊婦のうち約10%に見られます。妊娠高血圧症候群は、ただ血圧が高いだけではなく、他の病気を合併しやすいです。

高血圧ってどれくらい?

軽症のものでは、「収縮期血圧が140~160mmHg」もしくは「拡張期血圧が90~110mmHg」が当てはまる場合です

重症は、「収縮期血圧が160mmHg以上」もしくは「拡張期血圧が110mmHg以上」である場合をいいます。

妊娠高血圧症候群になりやすい人

  • 初産婦
  • 多胎
  • 40歳以上
  • BMI25以上
  • 不妊治療後妊娠
  • 妊娠初期血圧高値
  • 高血圧や蛋白尿の既往
  • 糖尿病の既往
  • 自己免疫疾患
  • 易血栓形成素因
  • 甲状腺機能亢進症・低下症

〈経産婦の場合〉

  • 妊娠高血圧症候群既往
  • 胎児発育不全児出産既往
  • 胎児死亡既往

〈家族の要因〉

  • 両親の高血圧症や糖尿病

などが挙げられます。

妊娠高血圧症候群はまだ不明な点が多く、原因も様々な因子が複雑に絡まりあって発症に至っていると言われています。

妊娠高血圧症候群になるとどうなる?

ママへの影響としては

  • 子癇(意識障害を伴うけいれん発作)
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害
  • 脳出血などのリスクが高まります。

赤ちゃんへの影響としては

  • 常位胎盤早期剥離(赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまうこと。赤ちゃんがかなり危険な状態になります。ママには急激な腹痛や性器出血が起きます)
  • 胎児発育不全(週数に比較して赤ちゃんが成長発達が遅れていること)
  • 胎児機能不全(赤ちゃんが子宮の中で元気な状態といい切れないこと)

重症である場合には、赤ちゃんやママの影響を考え、妊娠の終了の選択をしなければならないことがあります。つまり、早産での出産になります。

妊娠高血圧症候群と成長発達

妊娠高血圧症候群の妊婦から生まれた児の体重と身長は、成長標準曲線と比較して女児では3パーセントタイル以下、男児では10パーセントタイル以下と小さかった※2と報告されています。

これはつまり、同じ時期の赤ちゃんを100人小さい順で並べた場合、妊娠高血圧症候群の妊婦から生まれた赤ちゃんの身長と体重は、女の子では前から3番目より小さく、男の子では前から10番目よりも小さくなったという報告です。

また、海外では妊娠高血圧である場合、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)のリスクが高まることが示されています。

高血圧の原因、その予防についてはこちらの記事をご覧ください。

※1岡庭豊(2015),病気が見えるVol.10 産科第3版,メディックメディア

※2:田井中華恵ら(2020),特集 日本の周産期事情update―出生コホート研究からわかったこと―Ⅱ各論 周産期の環境と乳幼児の神経発達,産婦人科の実際,Vol.69 No.2,p.125-130