【妊婦の大敵冷え】陣痛が弱くなり、進みが悪くなるリスク2.3倍!‐微弱陣痛、遷延分娩

お産と冷え

微弱陣痛リスク約2倍

微弱陣痛とは、分娩開始時から、もしくは順調であった分娩の途中から、陣痛が弱くなっている要素(陣痛の圧が弱くなる、陣痛周期が伸びる、陣痛の持続時間が短くなる)のうち1つ以上が認められるものを言います※1

イメージ図

微弱陣痛は全分娩の0.6~10%におきています※1

10%と聞くと少ないように感じますが、出生数は約84万(令和3年)ですので年間で約8万人が微弱陣痛になっていると言えます。8万人と聞くとかなり多いですよね。

多胎、羊水過多、子宮筋腫、頻回分娩、子宮奇形などの場合には分娩の初めから微弱陣痛になる可能性が高いです。無痛分娩や和痛分娩、巨大児、児頭骨盤不均衡、軟産道強靭などでも微弱陣痛になります※1

さらに産婦さんの状態として、分娩に対する恐怖心が強かったり、疲れ果ててエネルギーが無くなってしまったり、膀胱に尿が溜まってることでも微弱陣痛になってしまいます

リラックスした気持ちで、時々エネルギー補充をしたり、トイレに行くことも微弱陣痛予防になります。

微弱陣痛があると、胎児が長い時間圧迫されることで苦しくなってしまうことや、胎盤が出てくるのが遅くなり、出血が多くなってしまうリスクがあります。また、骨盤底筋群に負担がかかり続けることで、産後の排尿障害が起きることもあります。

もしも微弱陣痛になった場合には、産後に骨盤底筋体操をしっかり行いましょう。

冷えと微弱陣痛

冷え症である妊婦さんは、そうでない妊婦さんに比べて約2倍微弱陣痛になるリスクが高まると報告されていま※2

この理由については、分娩進行中において、自律神経系のうち交感神経が緊張すると子宮筋が弛緩するため陣痛が弱まる。つまり、交感神経系が優位である冷え症では、微弱陣痛や遷延分娩を起こしやすいことがすいとく出来る※2としています。

私個人の推測ですが、冷えによって血管が細くなったり、血流が悪くなっていると、子宮に必要な栄養も届きにくいです。さらに、陣痛を起こす働きのある「オキシトシン」というホルモンは血液によって運ばれますので、これも十分に運ばれなくなることも原因であると考えます。

遷延分娩リスク約2.3倍

分娩開始後、初産婦の場合には30時間、経産婦の場合には15時間を経過しても胎児が生まれてこないものを言います※1

中村らの研究※2では全体の6.1%に遷延分娩が見られています。

遷延分娩の原因には、微弱陣痛(陣痛が弱い)、軟産道強靭(子宮口が開かない)、胎位・胎勢の異常(逆子や横位、骨盤の中に上手に回転して入れていない)、巨大児(4㌔以上)などがあります。

遷延分娩になると、破水している場合には直接的に胎児を圧迫する時間が長くなることなどから、胎児が苦しい状態になってしまう可能性が高くなります。

このため、状況によっては緊急で帝王切開になります。

遷延分娩になった産婦は、産後に排尿・排便障害や骨盤内臓器の下垂、マタニティーブルーになりやすく、申請時には、胎便吸引症候群や新生児仮死、感染などのリスクがあります※3。

冷えと遷延分娩

冷えのある妊婦さんは、そうでない妊婦さんに比べて遷延分娩が約2.3倍であったと報告しています※2

遷延分娩が冷えに影響した原因については微弱陣痛と同様であり、微弱陣痛であることが遷延分娩を引き置きしているとも言えます。

微弱陣痛や遷延分娩を減らすためにも、妊娠期から冷え予防に気を付けていきましょう。

また、お産当日にも冷え対策グッズを持参するようにしてください。裸足にワンピースで来られる方もいらっしゃいますが、これは進みが遅いかもしれないぞ?と私は思ってしまいます。入院用品にレッグウォーマーや靴下なども追加してくださいね!

妊娠期のリスクについてはこちら。

冷え対策についてはこちらの記事を参照してください。白湯などの温かい飲み物よりも体が温まる効果があると分かっているものがあります!

※1:岡庭豊(2015),病気が見えるVol.10 産科第3版,メディックメディア

※2:中村幸代,堀内成子,柳井晴夫,妊婦の冷え症と微弱陣痛・遷延分娩との因果効果の推定―傾向スコアによる交絡因子の調整(2013)日本看護科学学会誌,vol.33No.4,3-12

※3:平野秀人,小原幹隆,細谷直子ら(2006),母体搬送 ハイリスク妊婦の母体搬送のタイミング 羊水感染・遷延分娩,周産期医学,36(12),1581–1584.