亜鉛
亜鉛の役割
- 80以上の酵素を構成、300以上の酵素の活性化
- 細胞の分裂や細胞新生皮膚形成
- 抗酸化作用
- ビタミンCと共にコラーゲン生成
- 卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンの働きを助ける
- ビタミンの吸収を促す
- 免疫力を上げる
- 脳の神経伝達に影響(学習や記憶の維持に関わる)
- 味覚を正常化する
- 正常な発育を助け、骨格の発達を促す
- 性の発達と生殖機能・前立腺機能に必要
- アルコールの分解
こんなにも多くの役割が亜鉛にはあります。
しかし、この亜鉛もまた現代人に不足しているのです。
現代人の平均摂取量と1日の推奨摂取量
亜鉛の妊婦さんの1日の推奨摂取量は10㎎/日です※1。しかし、令和元年の20~29歳の非妊娠女性の平均摂取量は7.3㎎/日と不足しています※2。
妊娠前と同じ食事だと不足する可能性が高いです。
亜鉛が不足すると、様々な症状が見られます。
味覚障害、肌荒れ、傷の治りが遅い、脱毛、色素沈着、免疫力低下、貧血、うつ症状、不安症、記憶力の低下、成長障害、精神発達異常、精力減退、精子形成の減少など様々な症状や病態と関連することが知られています。
皮膚や味覚の症状がみられるようであれば亜鉛不足の可能性が高いです。
意識して亜鉛を摂取していても、清涼飲料水やファーストフード、カップラーメンなどに含まれる食品添加物の「ポリリン酸」や「フィチン酸」が亜鉛の吸収を邪魔してしまいます。
妊娠中は特にこれらの摂取は控えるようにしましょう。
子供の成長への影響
自閉症
自閉症譲渡幼児期の亜鉛不足との間に関連があることが示されました※3。自閉症児の亜鉛濃度が基準よりも低い値を示しました。
なかでも0~3歳の自閉症児での亜鉛不足の頻度は、男児で43.5%、女児で52.5%と高い数値になっています。これらから、乳幼児期の亜鉛不足が自閉症の発症に影響を与えている可能性があると言われているのです。
更に、亜鉛以外にもマグネシウムの不足頻度も0~3歳の自閉症児に高く、男児で27.0%、女児で22.9%と高い数値に見られます。
注意欠陥多動性障害
注意欠陥多動性障害(ADHD)児では注意欠陥度が高いほど、血液内の亜鉛濃度が低いことが分かっています※4。つまり、亜鉛が不足しているほど注意欠陥の程度が大きいということです。
それから、亜鉛を補充する治療がADHD児の一部の症状を軽減という報告もいくつか見られます。
したがって、亜鉛の不足は注意欠陥多動性障害の症状に影響を与えていると考えられているのです。
乳幼児期に不足する原因
亜鉛は妊娠28~32週以降に胎児に急速に送られ、胎児は身体の中に貯蔵します※4。この時期に母体の亜鉛が不足していると、十分に胎児に送られなくなってしまいます。
まず、胎児が母体から亜鉛を十分にもらう前に生まれてきた早産児においては不足しやすいです。
幼児は成長のために多くの亜鉛が必要になりますが、摂取源である母乳や離乳食に亜鉛が不足していると簡単に亜鉛欠乏になってしまいます。
例えば、亜鉛が欠乏したわかりやすい症状には、皮膚炎があります。おむつかぶれが頻回にみられる場合には亜鉛不足が疑われます。
また、成長障害や下痢、脱毛といった症状にもつながってしまいます。
乳幼児は亜鉛摂取を母乳によってしますので、妊娠期から継続して授乳期にも亜鉛の摂取を意識する必要があります。
亜鉛を含む食事
亜鉛は牛赤身肉や豚レバー、牡蠣や帆立、ウナギなどの魚介類、豆類や玄米、カシューナッツなどに多く含まれます。
日常的に亜鉛を摂取するには魚介類や玄米がおすすめです。
牡蠣は約2個(30g)食べるだけで亜鉛を5.4mg摂取することが出来ます。更に有機酸やビタミンCを一緒に取ることによって、吸収率がアップしますので、ポン酢やレモン汁と一緒に取ることがおすすめです。
妊娠中は必ず完全に火を通してから食べてくださいね!
また、亜鉛の妊娠期の1日の推奨摂取量は10㎎/日ですが、玄米は1膳(150g)に2.7㎎の亜鉛を含みます。1日3膳の白米を玄米に変えることで推奨量の8割の亜鉛を摂取することが出来ます。
全てを玄米に変えるのはハードルが高いかもしれません。白米の一部を玄米に置き換えてみることをお勧めします。
※1「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
※2令和元年の国民健康・栄養調査報告
※3:https://www.jstage.jst.go.jp/article/brte/27/3/27_125/_pdf
※4:Arnold, L. E., Bozzolo, H., Hollway, J., Cook, A., DiSilvestro, R. A., Bozzolo, D. R., Crowl, L., Ramadan, Y., & Williams, C. (2005). Serum Zinc Correlates with Parent- and Teacher-Rated Inattention in Children with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder. Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology, 15(4), 628–636.
子どもの体と精神の発達には、乳幼児期の栄養状態、もちろん胎児期からの栄養状態が重要なことが分かりますね。